2020年08月

日常を支えた黒曜石

黒曜石は英名で「オブシディアン」といい、噴火したマグマが急激に冷え固まることで出来る、しっとりと艶めいた光沢を持つ黒く美しい天然ガラスです。
固いガラス質なので割れた断面の切れ味が非常に鋭く、そのため矢じりや刃物の代用品として狩りや動物の皮をはぐ時などに使われてきました。なんと、150万年前の旧石器時代から人々の身近で使われてきたそうですよ。

黒色や灰色のものが多く、特に美しい物は装飾品や美術品にも使われています。あまり知られていないですが、イースター島にあるモアイ像の目にも黒曜石が使われているのだとか。

黒曜石の原産地は世界でも限られていますが、噴火山の多い日本では多くの地域で産出され、中には白い斑紋が表れた「スノーフレーク・オブシディアン」や「フラワー・オブシディアン」、赤茶色い酸化鉄が表れた「マホガニー・オブシディアン」と呼ばれているものもあるそうです。

古代から生活必需品として人々の日常を支えた黒曜石ですが、現代では模様を生かして作られたアクセサリーやインテリア小物として楽しまれているようです

(2020.8.28[Fri])

ベンタブラック

以前光を99.965%吸収する物質、カーボンナノチューブで構成されたベンタブラックの記事を書きました。光を当てても反射することなくチューブの中を屈折して放散される異質な真っ黒い物質です。
そんな真っ黒な物質をどのようなものに活用するかというと、太陽熱発電の熱の吸収を高めるための素材としてであったり、天体望遠鏡などの衛星機器に微かな星の光も捉えられるように
用いられたりと幅広く活用されています。
最近ではこのベンタブラックと並ぶほど光を吸収する漆黒の深海魚が発見されたそうです。深海は太陽の光が届かない真っ暗な世界です。
水深1000mでわずか100兆分の1の太陽光しか届かず、これは生物が検知できる光の限界だそうで、こうした環境では自らが発光することで獲物をおびき寄せて捕食して生きていく生物もいます。
しかし光の届かない闇の世界での生存戦略として自らも黒くなって闇に溶け込んで捕食されないという手段もあります。
人間と全く異なる場所で環境に適した効率的な進化を遂げていく生物に感嘆してしまいます。地球上の生物種のおよそ86%は未だに発見されていないそうで、私たちの想像をうわまわる生存戦略を駆使している生物がいるのか発見されるのが楽しみです。

(2020.8.18[Tue])

パールの糸替え



女性の人ならパールのネックレスを持っている方は多いと思います。
普段使いや冠婚葬祭など色々な場面で活躍しますよね。

しかし、パールの中に通っている糸は使用頻度や経年劣化により、切れてしまったりすることがあります。
そうしたことを防ぐために、定期的にメンテナンスをすることが重要です。

一昔前のパールのネックレスは絹糸が使われていて伸縮性があり肌に寄り添うという特徴がありましたが、自然素材なので経年劣化が避けられません。
安価な物にはワイヤーなどが使われていますが丈夫な分伸縮性がなく、肌に馴染まないという特徴があります。
そうしたことから近年ではポリエチレン素材の糸を使用した物が主流になっています。
絹糸よりも強く、ワイヤーよりも伸縮性があるため、切れにくく柔らかいという特徴を持っていることからネックレス加工に適していると言えます。

昔に買ったパールのネックレスなどは絹糸が使われている可能性が高いので、一度糸替えの修理に出してみるのも良いかもしれません。

(2020.8.13[Thu])

刻印

先日、家で趣味で使う用に「silver」 の刻印を買いました。
刻印は金属で出来たハンコのようなもので、文字の刻まれた面を打ち付けることで文字を作業物に入れることが出来ます。
私が行った工具屋さんには「手作り刻印」と「外国製刻印」の2種類のsilver刻印が売っていました。
工具屋さんに2種類の違いを聞いてみました。
「手作り刻印」はもう一方に比べやはりそれなりに品質が良く、比較的に昔からあるものらしいので、長年使用して薄くなってしまった刻印を上から打ち直すことが出来るそうです。一口に「silver刻印」 と言っても実際に刻まれている文字は「silver」「Silver」「SILVER」などメーカーによって大文字小文字の表記や文字の間隔などにバラツキがあって、「手作り刻印」はそれがずっと変わっていないので打ち直しても違和感がないとのことでした。
その代わりに手作り刻印はお値段が高めです。だいたい五千円〜八千円ぐらいになります。
外国製刻印はその逆で、品質が高くなく、文字のサイズや間隔などバラツキがあるそうです。その代わりにお値段が安いのが特徴です。三千円でお釣りがくるぐらいです。
以前そういった類いの海外製の安い刻印を買ったことがあるのですが、全く使い物にならず、文字は入らないし使う度に刻印の先がつぶれていくということがありました。

本当に使い物になるのか疑問だったので工具屋さんに聞いてみると「最近は海外の工場の技術も上がっているので手作り刻印よりは劣りますがバッチリ使えます」とのことでした。
趣味でたまにしか使いませんし、バッチリ入るとのことだったので安い外国製刻印を購入しました。
家に帰り実際に使ってみると、だいたいの場合「新品の刻印」といえば強い力で打ち付けなくても少し地金に刺さるような手応えがあるのですが、「外国製刻印」は打つと地金に弾かれるような感覚がしました。
失敗したかなと思いながら見てみると、以外としっかり刻印を入れることができました。しかしやはり繊細な場面では不向きな感じでした。
値段相応という所でしょうか。

使い込まれた刻印にはほとんどの場合「クセ」が
ついています。
一部が深く入りやすかったり、一部が薄くなりやすかったり、しっかり角度をつけないといけないなど様々です。
また刻印の打ち方も
職人さんや打刻する場所によって異なります。
その職人さんのクセや刻印のクセを補う打ち方であったり、打刻する場所に適した方法で打刻します。
よく聞く打ち方は刻印を打つ角度を変えながら数回打つ方法です。彫金の本などでも紹介されている打ち方です。しかし数回打つため、1回目と2回目で打つ位置が少しでもズレると文字がダブって入ってしまいます。

強めの力で一回だけガツンと打つ方法もあります。何度も打たないので文字がダブってしまうのを避けられます。その反面失敗した時は修正が難しく、一発勝負です。また繊細な場所では変形してしまうため強く打てません。
繊細な場所では直接手で刻印を押し付けて打刻する場合があります。品物を変形させにくい方法で、万が一失敗した場合でも修正が効きやすい方法になります。その代わり手の力だけでやるので刻印が他に比べ薄くなります。印面が丸くなってしまってる刻印や硬い材質の物に打刻する場合は難しくなります。
ハンドプレス機など、機械に刻印を取り付けて打刻している方もいます。
一定の力で安定した質で打刻が出来ますが刻印が取り付けられる器具や冶具を制作したり前準備が大変になります。


他にも聞いた話では刻印を腰か胸の骨が当たる場所に持ち、体全体を使って壁や柱などに押し付けて打刻するやり方や、
足の指に刻印を挟んで持ち、別の人間に打つ位置に固定してもらいながら踏みつけるように体重を使って打刻する職人さんもいるそうです。
にわかには信じられませんが、刻印を打つ方法も実に様々です。
近年では刻印と名の付く作業は全てレーザー刻印で行う所が増えてきているそうなので、
そういった技や巧な技術を目にする機会が減っているのは残念に感じます。

(2020.8.4[Tue])


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