今回は11月の誕生石である、トパーズについてお話します。
トパーズ(topaz)は、古代エジプトやローマ時代から使われていた宝石で、非常に幅広い色を示し、茶色の他、濃淡と彩度が様々な青、緑、黄、橙、赤、ピンク、紫などの色があります。 昔は、黄色い宝石の代名詞とされていたトパーズは、「黄玉(おうぎょく)」と呼ばれ、シトリン(黄水晶)と混同されてしまうことも多くあったようです。
名前の由来はいくつか説があり、 一つはギリシア語の「探し求める」という意味の"Topazos"から由来したという説で、 霧によって隠されるセント・ジョン島(Topazios)から、産出されるペリドットが、古い時代にはトパーズと呼ばれていたからとされています。 またもう一つの説は、サンスクリット語で「熱」を示す"Tapas"が由来とされています。
トパーズは多色性を示す石でもあり、結晶方向を変えると異なる色が見られます。 また、トパーズの化学式はAl2(OH,F)2SiO4 であり、 水酸基を含有する「OHタイプ」と、フッ素を含有する「Fタイプ」の2種類があり、 産地と色によって2分されています。
「OHタイプ」は、インペリアルトパーズ、ピンクトパーズなどで、「Fタイプ」に比べ、比重が低く屈折率が高いという特徴があります。 「Fタイプ」は、無色のホワイトトパーズ、ブルートパーズ、ブラジル産以外のイエロートパーズなどで、「OHタイプ」に比べ、比重が高く屈折率が低いです。
さまざまな色があるトパーズの中でも、「OHタイプ」である、インペリアルトパーズ(シェリー酒のような色合い)と、ピンクトパーズが希少で高価だとされています。
インペリアルトパーズは、 オレンジがかった黄色から赤みのあるオレンジ、ちょうどシェリー酒のような色合いのものが呼ばれています。 この名前は、一説では、ロシアの皇族がウラル山脈で採掘された最高級の色のトパーズを、独占的に使用できるようにしたからとされています。 またもう一説では、トパーズの主産地であるブラジルに在位していた皇帝ペドロ二世にちなんだとものとされ、 19世紀後半、アメジストを加熱して作られたシトリンが「ゴールデントパーズ」の名で多くでまわった為、「インペリアル」を頭につけて混同を避けたとされています。
ピンクトパーズは、 ローズトパーズとも呼ばれ、 褐色みの少ない色の濃いものが高品質とされ、稀に赤に近いピンクのものも存在し、特別な価値が付けられます。
トパーズの産地としては、 ブラジルの州であるミナスジェライスは高品質なトパーズの最も重要な産地の一つであり、イエローからオレンジ、レッド、ピンク、バイオレットなど、様々な色のトパーズがここで産出されています。 また、1972年にパキスタン北西部カトラン渓谷で鮮やかなピンク色のインペリアルトパーズが発見され、ピンクトパーズの産出で知られるようになりました。 カトランのグンダオ丘で産出されたピンクトパーズの色合いで最も珍重されているのは、紫がかった色合いのもので、一部の宝石取引ではシクラメンピンクと呼ばれているそうです。
トパーズの取り扱いについて、 硬度を示すモーススケールでは8なので高いと思われますが、靭性(割れやすさ)はあまり優れていません。 このため、欠けたりひびが入るのを防ぐために十分な注意を払う必要があります。 身に付ける際にも強い衝撃などに気をつけ、優しく大切に扱い、せっかくの個性豊かなトパーズを長く楽しみたいですね。
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