2022年09月

オパール

今回は、日本で最も人気な宝石のひとつであり、10月の誕生石であるオパールについてお話しします。
「オパール」は、SiO2に水が加わった非晶質の鉱物であり、サンスクリット語で宝石をあらわす「ウパラ(Upala)」を語源とし、また、ギリシャ語の「オパリオス(色の変化を見る)」が由来ともされています。
卵の白身に良く似ているため、中国では「蛋白石(たんぱくせき)」と呼ばれており、その後日本に伝わりました。
オパールの最大の魅力は、赤、オレンジ、黄、緑、青色などの虹彩が角度によって多彩に変化する「遊色効果」と呼ばれる現象です。
この現象は、規則正しく配列した粒子に、光が当たるときに生じる独特の揺らめき効果により見られ、光の波が、球の間を進むと波が分散したり、曲がったりして、異なる波長の色に分解され、遊色効果を起こします。
1964年にオーストラリアの科学者ダラー、ガスキン、サンダースらのグループが、電子顕微鏡を使ってオパールの内部のケイ素の粒子の積層パターンを発見することで遊色効果が解明されました。

世界最古の百科事典「博物誌」を書いたローマの博物学者プリニウスは、
「ルビーのレッド、エメラルドのグリーン、トパーズのイエロー、サファイアのブルー、アメジストのパープルなど、他の宝石にある性質を全て併せ持ち、どの宝石よりも優れている」と賛辞し、
「オパールには、内側の遊色効果がすばらしく、画家の深い豊かな色に相当するものもある。 その他のオパールは、燃焼する硫黄の燃える火や燃焼する油の明るい炎にさえも似ている」と観察しました。
多くの文化では、超自然的な起源と力がオパールにあると信じられてきました。
古代アラビアの伝説によると、オパールは雷とともに天から落ち、「空から落ちてきた稲妻」と考えられ、身につけることで、「我が身に稲妻は落ちない」と信じられていたそうです。
古代ギリシャ人は、オパールはその所有者に預言の賜物を与え、病気から彼らを守ると信じていました。 ヨーロッパ人は、長い間、希望、純潔、真理の象徴となる宝石として考えています。
また、オーストラリアの先住民であるアボリジニには、「造物主が虹に乗って大地に降り立ち、すべての人間に平和の知らせを持ってきた」という言い伝えがあり、造物主が歩いた場所の石に命が宿り、虹の色に輝きだしたのがオパールの始まりと言われていたそうです。

鉱物種のオパール類の中で宝石の価値のある宝石用オパールは、プレシャスオパールあるいはノーブルオパールと称する品質のもので、遊色効果のあるオパールと、遊色効果の有無にかかわらずオパール自体の地色(ポッチカラー)の美しいものも宝石としてコモンオパールと呼ばれています。
プレシャスオパールは、地色によって、ホワイトオパール・ブラックオパール・ウォーターオパール・ファイアオパールの4種類に分類されます。

プレシャスオパールの2大産地として、オーストラリアとメキシコが有名です。
近年はエチオピアのライトオパールも多く産出されています。

メキシコでは、遊色効果の高いもののうち、地色が青系統のものをウォーターオパール、オレンジ系統のものをファイアオパールと呼びます。
かつて15世紀のアステカ文明の装身具として使われていました。

オーストリアのオパールについて、
メキシコやエチオピア産のクリスタルオパールの水分量が約12%前後あるものに比べて、オーストラリア産オパールは堆積性のオパールの為、約6%前後半分以下と少ないので、ひび割れなどにも優れた耐久性を持っているのも特徴です。
世界各地で採掘されるオパールの中でもオーストラリア産オパールは、
約数千年前の大地に降り積もった大量の珪素が数百万年かけ固まり、オパールとなります。そのため、1cmのオパール層を形成するのにかかる年月は、約500万年とされ、
年月をかけて低温で圧縮されながら形成されたオパール層は、水分量が少ないため外気の影響を受けづらいと考えられています。

オーストラリアのオパールには、特徴的なものがいくつかあり、
ライトニングリッジ鉱区では、世界唯一の宝石質のブラックオパールが算出されます。
中でもハーレクイン(Harlequin)と呼ばれる大きめのパターンの遊色が現れるものが希少価値とされます。
クイーンズランド州では、褐鉄鉱を母岩とした、母岩付きのボルダーオパールが有名です。
また、オーストラリアでは、オパール化した恐竜の骨や、イカの軟骨、貝などの化石が白亜紀の地層から発見されます。
「シェルオパール(Opalised shell)」は、貝の化石がオパール化したもので、貝の形状が見られます。
ジュラ紀から白亜紀(約2億年〜6500万年前)の動物や植物の遺骸が地層に堆積 し、一度化石になり、時間を掛け粘土質の層がその上に堆積していくことで、重さ(圧力)により化石となった貝殻部分の炭酸カルシウムがカルシウムとして存在できない環境になるため成分が逃げ出し、 そこに二酸化ケイ素(Silica, シリカ)が入り込みます。この置換(Replacement)と言う現象により、シェルオパールが完成していきます。
また、貝の化石が全て無くなり、貝の形をした空間ができ、その空間に二酸化ケイ素を含んだ地下水が浸透し、水分が蒸発し、二酸化ケイ素が濃縮されシェルオパールが形成されます。
シェルオパールが採掘される場所は、ホワイトオパール(White opal)の産地である南オーストラリア州のクーバーペディが大半を占めますが、 一部ブラックオパールの産地であるライトニングリッジからも採掘されます。 クーバーペディのものは二枚貝の形で産出され、また、ライトニングリッジのものは巻貝の形で算出されるようです。
今は絶滅しているかつての生物が、長い年月をかけて地中で宝石となって、現代発掘されることからは、地球の歴史と雄大さを感じらます。
オパールの取り扱いについて、水分を含むため、モース硬度は5~6.5とあまり高くない宝石です。産地によっても含有する水分が異なることを意識し、乾燥や長時間日光に当てることには気をつけて、優しく取り扱い、唯一無二の美しい宝石を長く楽しみたいですね。

(2022.9.30[Fri])

留め金

ネックレスに着いている留め具ですが。引き輪を始めナス環や中折れ金具など様々な種類があります。多くの物は身に着ける時に右手で留め具を扱いやすいように取り付けてあります。弊社では右引き輪などと呼んでいます。世の中右利きの人が多いので身に着ける人の事を考えての取り付けです。左利きの人に向けたものが左引き輪です。ジュエリーに疎い知り合い(右利き)はそんな事は知らず何故か左引き輪の商品を買いそのまま使っていて「なんだかこのネックレス使いにくいんだ。」と相談してきた事があります。何気なく使っていると気づかない様な事ですが留め具が右か左かという事はそれなりに大切な事です。留め具の反対側にはもちろん受け輪がついています。基本的に引き輪の先端から受け輪の先端までの長さを全長として測ります。(メーカーやブランドによっては異なる場合があります。)そしてネックレスには長さを調整しながら身に着けられるアジャスターが付いている物も存在します。アジャスターは種類があります。好みの長さの所に輪環を取り付け全長との2ウェイで使えるようにするアジャスター環、受け輪サイズの輪管を受け輪にチェーン状に付け足すアジャスターチェーン、引き輪にアジャスター用スライドボールを取り付けて好みの長さに調整できるスライドチェーンなどがあります。アジャスター環は引き輪側に取り付けて受け輪と一緒に引き輪にかませて使う(引き輪に輪っかが2つ通っている状態)のが一般的です。ですが最近では受け輪に取り付けてアジャスター環だけ引き輪にかませて余ったチェーンと受け輪を背中に垂らすファッション的な身に着け方が流行り始めたらしくアジャスター環の取り付け位置をお客様と確認して作業に入るといったことが増えてきました。私的には、留め具もメーカーによって様々な形が存在する訳ですし、ネックレスに取り付けるパーツについて決められたルールとかがある訳では無いので特にこだわりとかは持っていません。むしろ色々な発想があって面白いなと感じています。年代や世代によっての出来上がり想像図や流行が違うので固定概念のようイメージは持たず様々なデザインの情報収集しながら仕事に取組みたいと思っています。

(2022.9.29[Thu])

手作り

ジュエリーを作るには様々な技法があります。一から地金で作る方法・地金より柔らかく、比較的自由に形成できるワックス・アートクレイ・3DCAD……

それぞれメリットデメリットはありますがなにから作り出すかによってその素材の特性を生かしたジュエリー作りが出来ると思います。例えば自然な曲線でふんわりと立体的なブローチが作りたい、となったら硬い地金で作るより指先で簡単・自由に形を表現できるみつろうで作る方がより自然な造形ができます。

なにから作るかによって準備する工具が違いますが、中でもCADはパソコン上で作りたいデザインを3Dに仕上げるスキルと3Dプリンターが必要になってきます。ですがどんなに緻密なデザインでもデータに起こすことが出来ればプリンターが造形してくれるだけなのでそれをキャストすればジュエリーになります。

3Dプリンターの用途は幅広く、なんと家でさえも作れてしまうようです。最近では卵の殻を素材にした家具がニュースに採り上げられていました。殻の白さが上品な陶器のようで、元が卵の殻だとは思えないほど高級感のある見た目でした。ジュエリーにもなにか再利用からなる素材の新しい貴金属が仲間になったりする日があるのでしょうか…

(2022.9.26[Mon])

珊瑚

ジュエリーで使われる宝石の中に「さんご」があります。

ジュエリーに使われる赤いサンゴは宝石珊瑚(コーラル)と言われ、光の届かない深海に生息している種類で、テレビなどでよく見る浅い海域に生息しているものとは別の種類になります。
浅い海域の種類のものは、見た目が赤い色をしていても、それをボキッと折って陸地にあげてしまうと色が白くなってしまい、宝石珊瑚とは同様になりません。

宝石珊瑚は水から出しても赤い色を保ち、古くから宝石として使われてきました。
しかし酸に弱く、汗や油で変色しやすい非常にデリケートな宝石になります。

本などに記載されている話では、宝石珊瑚のビーズをお湯に二時間浸けておくと、退色が目にわかる形で進行したり、レモン汁に浸して12時間ほど放置すると完全に溶けてなくなってしまうこともあるそうです。

赤い色の強いものは オックス・ ブラッド(血赤)と呼ば珍重されています。

この赤い色の濃いものがあれば色の薄いものもあります。

日本ではこの色の薄いものを「ぼけ」と呼んでいて、現在は別の価値観が入ってきたので価値が低くはありませんが、かつては色が薄くボケてるから価値があまりないということになっていました。

しかし海外ではこの色の薄いものは「エンジェルスキン(天使の肌)」と呼ばれ珍重されていて、その価値観が広まり、現在は日本でもエンジェルスキンと言われるようになりました。

日本では「ぼけ」
海外では「エンジェルスキン」

これは色の薄いものを綺麗だと思った人が、それを買う際に、あえてわざとそれを「ボケてる」と けなして、安く手に入れるための交渉材料にしたという話があります。

たとえそれを綺麗だと思って価値を感じても、あえてそれを別の表現や言い回しをして、価値を下げてから買えば安く買うことが出来ます。

また、言い方や表現法や違う感性を広めれば、価値の無いものに価値を付与して売ることができます。

本来、物の売り買いは「化かし合い」の世界になります。
欲しいと思ったらそれを誉めてはいけません。
けなして出来るだけ価値の低いものにしてから買うのが鉄則になります。

欲しいものの値段が交渉出来る時はそれを けなせば安く手に入れる事が出来るかも知れませんね。

(2022.9.21[Wed])

貴金属の比重について


貴金属は体積が小さいながら重量感があるのが魅力の一つです。
銀は10.5g、金は19.32g、プラチナは21.45gほどの比重があります。
つまり、同じ大きさでリングなどを作った場合、銀と金、プラチナでは倍ほどの重さの違いがあるということです。
重量感があるのはいいのですが、普段身につける物があまりにも重過ぎるのは困りものです。
そのためリングなどの裏がくり抜かれていたり、大柄な物やピアスなどあまり重くしたくない物の中が中空になっていたりするのは重さを抑えるためでもあります。
中が中空になっているぶん凹みやすいなどのデメリットもあるので、凹んでしまった物を直すのは至難の業なので気をつけて扱うようにしましょう。

(2022.9.14[Wed])

夏の暑さが本格的になってきましたね。


ちょっと前までは雨が多くて梅雨が戻ってきたのかと思っていましたが、気がつけばもう少しで気温40度に迫る勢いです。
工房の中は基本的には涼しくなっていますが、研磨の工程のスペースは換気の関係上夏の暑さとの戦いになっております。
年々増す暑さの対策に追われながら毎年夏をやり過ごしていますが、そろそろ新しい対策をとらないと熱中症の職人がでそうな勢いなので困っています。
換気の関係上冷房はあまり望めませんが、サーキュレーターの増設でなんとか今年の夏も熱中症にならないよう乗り切りたいと思います。
これ以上暑くなりませんように・・・。

(2022.9.9[Fri])


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